認知症の認知
2009/12/28 20:02:13
今年、認知症と判定され、その薬と共に、以前からの薬も処方している患者さんが居ます。
5粒の薬・・・・説明しても、家に帰ると分らなくなり、再来なさいます。
毎回のことですが、この方は、ご自分が認知症であることは認めていらっしゃるのですが、
認知症扱いされるのは、まだ自尊心が納得されていないようで・・・・。
対応は今までと変えてませんけど、薬を分封されることが、お嫌のご様子で。
「 袋の中の薬が、一体何なのか、分らなくなるから、シートのまま下さい。 」という要求。
「 ご家族の方が、毎回、絶対に傍について見てくれるというのでしたら、そうしますから
ご家族の方と いらしてください。 」と先生と押し問答。
最初の頃・・・・・ご自分で、紙とペンを持ってきて、「 もう一度教えて下さい。 書きとめますから。 」
と仰ったのを 思いだします。
でも、間違えたら大変なので、認められませんでした。
紙を見ること。 紙に書きとめたことすら、思いだせない場合もあるので。
痴呆は、死への恐れを 外す為の自然の摂理だったはずなのに、肉体の寿命が延びたために
身体の自由は効くけど・・・・という方々もいらっしゃいます。
脳は正常だけど、身体の自由が利かない・・・・という方もいらっしゃいます。
いずれも、本人には、辛く、情けないという感情が 強いです。
ボケの始まった初老の方の口癖は、「 オレは、バカになってきたから。 」
この方の中高年時代の口癖は、実は「 どいつもこいつもバカばっかりだ! 」・・・でした。
完全に痴呆に入った方は、付添いの方と上手く行っている様子も 伺えますが、
症状が出始めたばかりの方々は・・・・本当に切ないです。
もしも、傍についていられる方が居たら、やれる限りやらせてあげられるのでしょうが、
最近は、2世代で暮らしている方は、あまり居ませんしねぇ。
御夫婦で、痴呆が始まり、生活保護のお世話になっている場合もあります。
お互いに 相手が馬鹿になったと、言いあってますねぇ。
私も もの忘れをしたとき、ふとこういった患者さんのことが 頭をかすめるんです。
私よりずっと若い人が、「 私も よく忘れますから~(笑)」と言います。
「 忘れた 」 と 思うこと自体、忘れてないんだなぁ・・・・
「 忘れた 」 というのは、書きとめたこと、食べたこと、「忘れた」ということさえ、忘れるんだ。
「 忘れる 」 というのは、苦しみや恐怖から免れるため 人間に必要な能力なのですが、
現代では 苦しみも生みだしてます。