『 博士の愛した数式 』
2009/11/18 20:05:28
出版社: 新潮社 (2005/11/26)
出演: 寺尾聰, 小川洋子, 小泉堯史, 深津絵里, 齋藤隆成
販売元: 角川エンタテインメント
DVD発売日: 2006/07/07
「ぼくの記憶は80分しかもたない」
博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた
―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。
博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。 数字が博士の言葉だった。
やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。
あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * 以上 amazon 商品説明 から * * * * *
読むまでは、脳障害の話だと思ってました(笑) とんでもない先入観。←
悲しい、奇跡の物語というより、静かに流れる 美しい小説だと思います。
原作は、家政婦である母親の目線、 映画は、ルートと名付けられた息子の目線。
それぞれ、全く違う切り口、要素、の別作品として、楽しむと良いかと・・・。
(浅丘ルリコさんの 美しさには、驚きました!全盛期より、美しい・・・・)
参考書籍の中の「 数の悪魔 」は、私もず~っと以前に読んだことが有ります。
確かに 覚えて使う算数 ではなく、数字に思いをはせる数学 は感じましたが、
この作品のような発想、全く浮かびませんでしたねぇ。
この作品の素晴らしさは、「 美しさ 」だと思います。
数式の美しさを表現する、作者の文体・表現力の美しさに 魅せられました。
“この作者の他の作品を読んでみたい” と思わせる作家を また一人見つけることが出来ました。
私が好きな表現の中から、幾つか、ご紹介。w ( もっと美しい文体が、たっくさん在ります。)
1から10までの足し算を 1つづつ足していく以外の方法に “ 気づいた ”時の文章です。
「 間違いなく5は中心だった。前に4つ、後ろに4つの数字を従えていた。
背筋をのばし、誇らしげに腕を空へ突き出し、自分こそが正当な目標であることを 主張していた。
その時、生まれて初めて経験する、ある不思議な瞬間が 訪れた。
無残に踏み荒らされた砂漠に 一陣の風が吹き抜け、目の前に一本の真っさらな道が現われた。
道の先には光がともり、私を導いていた。
その中へ踏み込み、身体を浸してみないではいられない気持ちにさせる光だった。
今、自分は、閃きという名の祝福を受けているのだと分った。 」
220 ; 1+2+4+5+10+11+20;22+44+55+110=284
220=142+71+4+2+1 ; 284
「 220の約数の和は284。 284の約数の和は220。 “ 友愛数 ”だ。
滅多に存在しない組み合わせだよ。
フェルマーだって、デカルトだって一組づつしか見つけられなかった。
神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字なんだ。
美しいと思わないかい? これほど見事なチェーンでつながりあっているなんて。 」
「 君はルートだよ。
どんな数字でも 嫌がらずに自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号 ルートだ。 」
「 君の利口な瞳を 見開きなさい。 」
「 大事なのは、あきらめずに どれだけ考えぬけるかだ。 」