『 きよしこ 』
2010/07/04 20:13:41
(新潮文庫) 新潮社 (2005/06)
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。
言葉がちょっとつっかえるだけ。
言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。
思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。
そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。
ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと―。
大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * 以上 amazon 商品説明 から * * * * *
親の仕事で何度も転校を繰り返す少年の小学校から大学受験までの物語。
「 きよし 」という少年の「 個人的な話 」という作者の話から、モデルは作者本人かと。
吃音で、思い通りにいかないことも沢山あるけど、悲しい物語でも、頑張る物語でもない。
重松さんらしい、当たり前の日常でパッピーエンドでもバッドエンドでもない。
でも、だからこそ、読者にも「 それでいいんだよ 」「 そんなモンだよ 」という
安らぎを感じさせてくれるような作品です。
転校先でのそれぞれのエピソード。
それぞれの年代に 有りがちなことや人々。
病気や障害と共に生きていく人にとって、同情や「頑張って」の言葉より、嬉しいものがある。
いつも神社にいて、昼間っから酔っ払っているおっちゃんとの会話。
「 おっちゃん 」
「 うん? 」
「 いま・・・・謝ったとき、どもった? 」
おっちゃんは振り向いて、笑いながらうなずいた。
「『どもった?』の「ド」も どどをくっとったで。」(どどをくう=どもる)
「 せやけど 」とつづけた。
「 どれがどないしてん。ボクはどどをくる子ォで、そんなん、もう・・・なんちゅうか、
ええやんけ 」
慰めでも、励ましでも、なかった。